1 松尾芭蕉の春の俳句 25
1.1 あち東風や 面々さばき 柳髪
1.2 梅が香に 昔の一字 あはれ也
1.3 梅の木に 猶やどり木や 梅の花
1.4 門松や おもへば一夜 三十年
1.5 鐘つかぬ 里は何をか 春の暮
1.6 元日や おもへば淋し 秋の暮
1.7 観音の 甍みやりつ 花の雲
1.8 紅梅や 見ぬ恋作る 玉すだれ
1.9 西行の 菴もあらん 花の庭
1.10 咲乱す 桃の中より 初桜
1.11 さまざまの 事おもひ出す 櫻かな
1.12 猫の恋 やむとき閨の 朧月
1.13 子の日しに 都へ行ん 友もがな
1.14 初桜 折しもけふは よき日なり
1.15 花ざかり 山は日ごろの あさぼらけ
1.16 花の雲 鐘は上野か 浅草か
1.17 花見にと さす船遅し 柳原
1.18 春たちて まだ九日の 野山かな
1.19 春もやや けしきととのふ 月と梅
1.20 日は花に 暮てさびしや あすならふ
1.21 蓬莱に 聞かばや伊勢の 初便
1.22 二日酔 ものかは花の あるあいだ
1.23 水とりや 氷の僧の 沓の音
1.24 行春を 近江の人と おしみける
1.25 両の手に 桃とさくらや 草の餅
2 松尾芭蕉の夏の俳句 25
2.1 朝露に よごれて涼し 瓜の土
2.2 紫陽花や 藪を小庭の 別座敷
2.3 暑き日を 海に入れたり 最上川
2.4 瓜作る 君があれなと 夕すずみ
2.5 己が火を 木々の蛍や 花の宿
2.6 杜若 語るも旅の ひとつ哉
2.7 風かほる こしの白根を 国の花
2.8 風の香も 南に近し 最上川
2.9 語られぬ 湯殿にぬらす 袂哉
2.10 川かぜや 薄がききたる 夕すずみ
2.11 京にても 京なつかしや ほととぎす
2.12 涼しさや ほの三か月の 羽黒山
2.13 無き人の 小袖も今や 土用干
2.14 夏来ても ただひとつ葉の 一葉哉
2.15 夏の月 ごゆより出て 赤坂や
2.16 昼顔に 米つき涼む あはれ也
2.17 弁慶が 笈をもかざれ 帋幟
2.18 蛍火の 昼は消つつ 柱かな
2.19 ほととぎす うらみの滝の うらおもて
2.20 ほととぎす なくなくとぶぞ いそがはし
2.21 水むけて 跡とひたまへ 道明寺
2.22 夕顔や 酔てかほ出す 窓の穴
2.23 みな月は ふくべうやみの 暑かな
2.24 ゆふばれや 桜に涼む 波の花
2.25 世の夏や 湖水にうかぶ 波の上
3 松尾芭蕉の秋の俳句 25
3.1 秋風の ふけども青し 栗のいが
3.2 十六夜の 月を見はやせ 残る菊
3.3 菊の香に くらがり登る 節句かな
3.4 菊の香や ならには古き 仏達
3.5 霧しぐれ 富士をみぬ日ぞ 面白き
3.6 こちらむけ 我もさびしき 秋の暮
3.7 たなばたや 穐をさだむる 夜のはじめ
3.8 何ごとも まねき果たる すすき哉
3.9 東にし あはれさひとつ 秋の風
3.10 夏かけて 名月あつき すずみ哉
3.11 一家に 遊女も寐たり 萩と月
3.12 冬しらぬ 宿や籾摺る 音あられ
3.13 文ならぬ いろはもかきて 火中哉
3.14 鬼灯は 実も葉もからも 紅葉哉
3.15 見送りの うしろや寂びし 秋の風
3.16 三日月や 朝皃の夕べ つぼむらん
3.17 見る影や まだ片なりも 宵月夜
3.18 むざんやな 甲の下の きりぎりす
3.19 名月の 出づるや 五十一ケ条
3.20 名月は ふたつ過ても 瀬田の月
3.21 桃の木の 其葉ちらすな 秋の風
3.22 行秋の けしにせまりて かくれけり
3.23 湯の名残 今宵は肌の 寒からむ
3.24 義朝の 心に似たり 秋の風
3.25 義仲に 寝覚の山か 月悲し
4 松尾芭蕉の冬の俳句 25
4.1 いざ子ども 走ありかむ 玉霰
4.2 石山の 石にたばしる あられ哉
4.3 魚鳥の 心はしらず 年わすれ
4.4 京までは まだ半空や 雪の雲
4.5 口切に 境の庭ぞ なつかしき
4.6 木枯や たけにかくれて しづまりぬ
4.7 三尺の 山も嵐の 木の葉哉
4.8 霜を着て 風を敷寝の 捨子哉
4.9 水仙や 白き障子の とも移り
4.10 旅人と 我名よばれん 初しぐれ
4.11 月花の 愚に針たてん 寒の入
4.12 月雪と のさばりけらし としの昏
4.13 年暮ぬ 笠きて草鞋 はきながら
4.14 庭にきて 雪を忘るる 箒哉
4.15 盗人に 逢ふたよも有 年のくれ
4.16 初しぐれ 猿も小蓑を ほしげ也
4.17 初雪や かけかかりたる 橋の上
4.18 初雪や 水仙のはの たはむまで
4.19 半日は 神を友にや 年忘れ
4.20 一露も こぼさぬ菊の 氷かな
4.21 百歳の 気色を庭の 落葉哉
4.22 二人見し 雪は今年も 降けるか
4.23 冬庭や 月もいとなる むしの吟
4.24 冬牡丹 千鳥よ雪の ほととぎす
4.25 雪と雪 今宵師走の 名月か
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